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テーマを絞った随筆(エッセイ)集です

ヤマビル 2021/09/25
 安心してください。本サイトでは、あの忌まわしい画像は一切アップしていません。文書メ インと現場写真のみで、体験をお伝えいたします。最後まで、安心してお読みください。
 丹沢登山を趣味にして12年。登頂していない山頂と登山道は「熊木沢の出会」〜「弁当 沢ノ頭」〜「棚沢の頭」で主脈に出るルートくらいだ。勿論、沢やロープを使うルートは除き ます。「臼ヶ岳南尾根」も制覇すれば、「ネクタイ尾根」「鍋嵐」「ブッツェ平」も踏破しました。 時代の進化と裏腹に、丹沢登山は錆びれる一方です。マイナーな登山道は整備されず、 放置され放題。12年も前から丹沢の魅力に取りつかれて良かったと、今はつくづく思いま す。
 さて、タイトルの「ヤマビル」ですが、蛭(ヒル)という生物の一種。体の両端に吸盤があっ て、その吸盤で尺を取るように進むのが特徴です。吸血するタイプが残念にも、丹沢に生 息する「ヤマビル」。麻酔後に吸血するので、人や動物は吸血後も気付きません。
 オイラが丹沢登山を始めた2010年当時から「ヤマビル」の被害や注意喚起は行われて いました。更にその昔、オイラが高校ワンゲル時代(1980年)は、そんな被害は夢にも知り ませんでした。
 「所詮、噂は噂」と、真実と見向きもせず、何の対策も当時は行いませんでした。「自分 だけは、大丈夫!」、これも危ない呪文です。
 時は2012年9月8日。初コースの「長尾尾根」を挑戦した日に地獄の様相を味わいまし た。今、考えれば、よくそんな日に丹沢に入りましたね。今は絶対に5月〜9月は足を踏み 入れません。
 「長尾尾根」は下りに利用したので、その日の登山はほぼ終盤。「上ノ丸」から「物見峠 入口」に向かう地図にもない道を進むと、緑に覆われた素晴らしい景色に感動して記念写 真。
  
 何にも知らないで、行動食を食っちゃるてるね。あの悍ましき後なら、食欲なんか消えま すよ。
 そんな景色・休憩から40分程で「物見峠入口」に。ふと、足元のシューズを見ると、細長 い生き物が靴ひもの穴から、我が足の中に入っていきました。凄く細くなって、見た事もな い生物。ヘビ? ミミズ? 目の錯覚? それとも、噂のアレ? 一匹いるってことは、うじ ゃうじゃいるの? 腰を下ろして、シューズを脱いでいたら大変な被害に?
 


 「物見峠入口」にかかる橋。ここから「一ノ沢峠」まで一か八かで挑戦します。だって、こ んな「札掛」あたりで、林道歩きしたら日が暮れます。因みに、この橋の写真から、次のト ンネルの写真まで、時間差で2時間弱でした。この2時間弱に何が起こっていたのでしょ う。
 実は、ここ(物見峠入口)から「一ノ沢峠」までのルートも初めて。「一ノ沢峠」からバス停 の「煤ケ谷」までは、「大山北尾根」のルートで体験済みだ。
 ここから恐怖の体験コラムは青字で表記します。
 画像の橋を渡って、早速登山道を見失った。最低一匹の「例のヤツ」がオイラの足内に いる。焦って、登山道を見失うのも頷ける。ズボッ ズボッて数歩を藪に踏み込んでしまっ た。次の瞬間驚いた。シューズに無数の奴らがうごめいている。これは、まさしく「ヤマビ ル」だ。尺を取って、我が素肌の部分を目指して登って来る。その速さと言ったら、凄い。 自然に、天性の行動として、デコピンで一匹ずつ払い除けた。足を振って、靴でも抜けたら 大事だ。
 とりあえず、我が素肌まで達する奴らはいなかったし、靴下やシューズにたかった奴らは 払い除けた。そして、登山道の地面に目をやると、奴らはウジャウジャといる。赤っぽい色 の生物が、ゆらゆらと、うごめいているのだ。これは地獄だ! 引き返しても、先程の林道 も危険だ。
 「一ノ沢峠」から先は経験あるので、そこまで突っ走ることにした。走りながらじゃ、足元 の被害が確認できない。一瞬立ち止まって確認すると、片足それぞで10匹程たかってい る。そいつらをデコピンで払い除ける。立ち止まっているわけだから、その間にも容赦なく 這い上がって来る。試しに、踏みつぶしてツイストしてみた。しかし、奴らは極細になって、 シューズ底の凹みに紛れてしまうのだ。
 そうこうしていると、被害の回避方法が解ってきた。オイラの靴と、靴下の間に侵入した 奴らは、オイラが動く限りは吸血できない。だから、素肌の大腿部を目がけて登ってくるの だ。そして、オイラの素肌に到達する前に立ち止まってデコピンで払えば、その繰り返しで 永久に奴らは我が大腿部に到達できない。立ち止まってデコピンをくらわすタイミングは微 妙だが、なんとかその繰り返しで「一ノ沢峠」まで辿り着いた。ここは既に訪れた事がある コース。日が当たって、視界が広がった。同時に「ヤマビル」も皆無になった。そんなに奴 らの生域分布は極端なの? でも、オイラのシューズ内には、まだまだ無数の奴らが居 る。オイラが動いている限りは、奴らは丸くなってシューズから脱出出来ないのだ。
 本来なら、このまま登山道でバス停のある「煤ケ谷」まで行けば近道なのだが、どうして も我が靴内が気になる。こんな状況じゃ、誰だって同じですよね。
 と、いう事で、「物見峠」で林道に降りた。車も通らない林道なので、道の真ん中のアスフ ァルトに座って靴を脱いだ。靴下にも、靴からも、ウジャウジャと奴らは出てきた。さっきま では、デコピンでとどめはさせなかったが、ここは人間界の世界だ。タバコに火をつけて、 それで一匹ずつジュッと焼いた。
 林道のど真ん中で座っていると、サイクリストが通りかかった。
「どうかしました?」と、サイクリスト。
「ヤマビルを退治しているところです」と、オイラ。
「駄目ですよ、こんな時期に山に入っちゃ」。全く、おっしゃる通りでした。
 

 全て「ヤマビル」を除去した直後の我が画像。「フーっ、一仕事終えたよ」。
  
 更に林道歩き1時間で、やっとバス停に。忘れられない登山の1日でした。ハプニングが 起こるから、山行は面白いんだけどね。

 その後、丹沢で「ヤマビル」に遭遇したのは一回だけ。時期に気をつければ遭遇するは ずがありませんが、その日は10月にもかかわらず暑い日でした。朝から暑くて、「バカ尾 根」途中の「丹沢ベース」付近で一匹見ました。
 「ヤマビル」も生きています。生きるために必死なのは人間様と同じです。動物から吸血 すれば、その血を濃縮して、一年間は安泰な栄養補給だそうです。そして、子孫も生めま す。一方で、吸血できなければ成長できません。オイラの素肌である大腿部を目がけて這 い上がってきた奴らの姿は、まさしく一攫千金を狙う人間たちそのものでした。
 気になる「ヤマビル」の生息域ですが、標高の低い登山口に限られます。残念ながら、 相模原・厚木・伊勢原・秦野の登山口はアウトです。退避薬を塗る対策は、前はやってい ましたが、今はしません。臭いし、他の山に行けばいいだけ。そもそも、夏山なんて暑く て、雨で、嫌なだけ。その時期に訓練するなら、丹沢でなくてもいいはずです。そのかわ り、秋冬の丹沢の景色は素晴らしいです。
 最後に、「ヤマビル」を丹沢の広範囲に広げた原因は鹿と猪です。そういえば、12年前 の丹沢には、鹿が多かったです。登山道でよく見かけました。動物愛護の影響で増えてし まったのでしょうか? 木々の皮は食い荒らされ、登山道からの景色も酷くなりました。「ヤ マビル」は卵を土や草に生みつけるのではなく、鹿や猪のヒズメに卵塊を生みつけるので す。
 天敵がいればねえ。水中ならともかく、地上で奴らの天敵は小鳥かカエルくらい。絶対数 が違います。
 結局が薬局、「ヤマビル」に献血した被害は無いのですが、あの姿は思い出したくないく らいに嫌です。吸血されても痛くないので、そんなに神経質になる必要もないかもしれませ んが、あの容姿だけは絶対にNGです。尺を取る動きが絶対にNG。それらが大群なので 更にNGなんです。




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